2019年10月の台風19号は、日本各地に深刻な爪痕を残しました。私の暮らす地域でも河川が氾濫し、多くの建物や田畑が浸水しました。その中で、最も地域の心に大きな喪失感を与えたのは、長年人々の祈りを受け止めてきた神社が濁流にのみ込まれ、跡形もなく失われてしまったことです。世代を超えて守られてきた場が失われた光景は、私にとって忘れがたいものでした。
私は現在75歳。建築士として長年の経験を積んできましたが、災害後、地域の人々から「神社を再建してほしい」という声を受け、再び大きな使命を感じるようになりました。ただし、再建は単純に建物を建て直すだけではありません。地域の人々が安心して集い、祈りを捧げられる場を「未来へとつなぐ」ことが求められます。
今回大きな課題となったのが「農地転用申請」でした。神社を再建するためには、新しい土地の確保が必要です。しかし多くの地域では農地が広がり、その土地を宗教施設用地として利用するには農地法に基づく正式な転用手続きが不可欠です。農業を守りながらも、地域の文化と祈りの場を再建する。この両立を図ることは、非常に繊細で難しい課題です。私は行政と相談を重ね、必要な申請書類を整え、持続可能性や地域貢献を丁寧に説明していきました。
同時に、私は「Web5」という新しいデジタルの可能性に挑戦しています。Web5は、データを分散的に管理し、利用者自身が情報を安全に制御できる次世代のインターネットです。一見、神社再建や農地転用とは関わりがないように見えるかもしれません。しかし私は、この技術が「信頼」と「透明性」を確保する力を持つと感じています。
農地転用のプロセスや再建の進捗をWeb5を活用して共有すれば、地域住民や支援者が誰でも正確な情報を確認できます。寄付や支援の流れを分散型の仕組みで記録すれば、不透明さを排し、安心して協力できる環境を整えることができます。かつて口伝えや紙の回覧で広がっていた「助け合い」が、Web5の仕組みによってより確実で安心な形へと進化するのです。
さらに、神社の再建そのものが「文化の継承」である以上、その記録を未来へ残すことも大切です。設計図面、工事記録、地域住民の思い出や祈りの言葉――それらをWeb5の仕組みで保存すれば、後世に改ざんされることなく受け継がれていきます。神社という建物だけでなく、「祈りの物語」そのものを未来に残せるのです。
私は75歳という年齢に達しましたが、学びを止めることはありません。台風19号で失われたものを取り戻すだけでなく、未来へ祈りをつなげるために挑戦を続けています。農地転用申請という法的な壁を乗り越え、地域の合意を得ながら進める再建の道のりは決して容易ではありません。しかしそこに、Web5がもたらす透明性と信頼性を重ね合わせることで、新しい可能性が広がると信じています。
「祈りを再び」。この言葉を胸に、私はこれからも歩み続けます。神社を再建することは、地域に安心と絆を取り戻す営みです。そして、その過程をデジタルの力で記録し、共有し、未来へつなげることこそが、私にとっての使命なのです。
